後記、今後の課題など……
自分のための執筆後の反省文です。読んでくださるというありがたい方、
ねたばれしているので、どうぞご注意くださいね。
[ お読みいただいた方へ ]
内容的に、問題のある描写(障害者、殺人の描写)があるので、不快感を感じられた方がご
ざいましたら、誠に申し訳ございません。
自分としては、猟奇殺人や障害者差別を目的として書いたものではないのですが……。
目的としては近未来を舞台としたホラー小説を書きたい、と思って書いたものです。特に、私
個人は現在の国際情勢──アフガニスタンの内乱による時代の後退を見たり、また国際的緊
張の高まりに不安を持ったり──に対して興味があり、また日本の未来は人口も少なくなって
衰退していくんだろうなぁという思いがありますので、それを形にしてみたかったのでした。
文中、殺人の描写にグロテスクな部分があり、またそれが親殺しという非倫理的なものです
ので、その点についても誠に申し訳ないと思います。殺人についての欲望を助長するような表
記と捉えられる方がいればいけないと思い、年齢制限をつけるべきかどうか迷ったのですが、
あえてつけませんでした。自分の文章力では人に影響を与えるほどの文章ではないであろうと
いう思いもあれば、作品のテーマ自体は「暴力の連鎖」を否定的に捉えたつもりであったので、
それが伝わって欲しいという思いなどもありました。
殺人についての私の考え方は、当然ながら「決して行ってはいけないこと」のひとつである、と
いうことです。
動物についても同じことですが、他の生命を(食べるため以外の目的で)奪うことは、生命に
与えられた摂理に反したものであると思います。また、罪を犯すことによって魂は汚れていき、
もしも罰せられることはなくとも、自分自身を愛せない人間になっていくのではないでしょうか。
それは不幸なことであると思います。自分が虐待された、苛められた、不愉快な思いをさせら
れた、ということで相手を憎むことは誰しもが体験することだと思いますが、その憎しみを浄化
するには報復するのではなく、その相手を反面教師と捉え、自分は他の人に対して同じ行動を
取らないという信念を持って行動し成長していくことが心の平和に繋がると思います。
作中の登場人物は憎悪を抑えられない連中ばかりでしたが、その憎悪を抑えるすべを学ば
ないかぎりは、心の闇は死ぬまで続いていくのだろうと思っています。
長い作品にお付き合いいただいて本当にありがとうございました。今後ともご指導いただけ
れば、誠に幸いでございます。ありがとうございました。
[ 以下は自分のための覚書です ]
10年ぶりくらいに書き上げた長編。長編1「生誕祭」が途中で座礁してしまい、他にも座礁中
の長編がある。ゆっくり書くと挫折する可能性が高いと思い、案から完成までほぼ1週間、とい
う短期間で書いてみた。
プロットについてはもっと時間をかけるべきだったように思う。理由は、執筆中、また推敲中
に脇役の村上、大雅の意図や行動を中心としてたくさんの矛盾を発見し、追記せざるを得なか
った点が多かったため。これは、座礁した他の長編と同じ現象で、この作品については202枚
と短いこともあり、最初から書き直すほどの大ポカはなかったものの(気がついていないだけか
もしれないが)、とにかく長編ではプロットをしっかり立てておかないと途中でダレてしまったり、
登場人物の行動に矛盾が生じたりして執筆するのが厭になる。次回からは特に長編について
はもっと時間をかけてよく構成や人物の動機について検討してから執筆にかかるべき。
読み返して思うことは、「陳腐な作品である」ということ。ただし、今の自分の課題は矛盾のな
い、また中だるみしない構成と、語法的に問題のない文章を書くこと、また自分の文体を作る
こと、人物像を考えること、なので、作品自体は陳腐な作品であっても構わないように思う。独
創的な作品を目指すにはまだ未熟にすぎる。もっと多くの作品に接して、また日頃のメモの積
み重ねによって引き出しをたくさん作ってからのことだと思う。
内容について。心理描写が浅い。ストーリーに対して都合のいい人物でありすぎて、現実味
が薄い。まず主人公の梨花と翠については、自分の直接の加害者ではない第三者への殺人
を平気で行うという心理について、描かれていない。また、脇役の大雅、村上、瑠華について
は、それぞれの人物像が非常に浅い。主人公の二人を正当化する、ストーリーにとって都合の
いい人物でしかない。大雅はなぜ翠を愛したのか。村上と瑠華はなぜ梨花を虐待したのか。そ
の理由はいくらでも考えられるはずなのに、それぞれの人物の過去や性格を考えていなかっ
たため、非現実的な人物像になってしまっている。
次に時代設定について。50年後ほど未来の日本がどうなっているのか。全然考えることが
出来なかった。これについては、政治経済科学歴史について普段の勉強が足りない、そのこと
につきる。
「殺人」を犯す人物の心理について。私が念頭においていたのは、近年ニュースになった数
件の有名な殺人事件。その加害者の多くが、幼少期のトラウマを抱えた過去を持っていたとい
うこと。ただし、その怒りは、ほとんどの犯人が直接の加害者(親)には向けた犯罪ではなく関
係のない第三者への犯罪という形で発散されている。その背景にあるものは何だろう。また、ト
ラウマのない(少なくともTVや新聞であまり報道されてはいない)加害者もいる。ではその背景
の心理は何なのだろう。それを突き詰めて考えれば、もっと深い作品が出来たのではないか。
また時代背景や文化と人物の行動についての関係ももっと考えて念頭に置いておけばよかっ
た。これは日ごろの報道と歴史の勉強をするしかない。
この「冬の陽炎」には、主人公二人に対して「親の残虐」という理由を与えすぎている。理由の
薄い犯罪にしておけばよかったと思う。親の児童虐待については、直接の身体的な虐待よりも
「ネグレクト」という形をとった虐待の方が現実には多いだろう。それを考慮すればまた別の作
品が書けるように思う。
次に文章についてだが……目も当てられない。「てにをは」の使い方が身についていない。推
敲を繰り返すたびに新しい間違いを発見。UPしてからもたぶん推敲漏れは多くあると思う。
今後この作品について加筆する気にもしもなったときには、とにかく周囲の人物像と時代背
景について書き込もうと思う。(2002.12.10)
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